ホーキング音楽を語る

先日ニュースでブラックホールが見つかったと大々的に報じられていましたが、何年か前に亡くなったホーキング博士がこの報道を聞いていたらどんなに喜んでいたでしょうか!今回は私の音楽とは関係のない宇宙の話をしてみたいです。

ホーキング博士の本に出会ったのは、博士が亡くなってから程なくしてゴールデンウイークに池尻のライブバーでリハーサルが終わったあと駅前の本屋さんでふと文庫本の棚から「ホーキング宇宙を語る」を取り上げた時でした。

確か難病で体が動かず、脳ミソだけで生きているイギリスの有名な宇宙物理の教授くらいにしか知らなかった私は、ニュースで博士が亡くなったということを何週間か前に聞かされていて、その記念でこの文庫本が出てると本の帯(おび)を見て気づき何となく手に取ったのでした。

最初の数ページを読んでホーキングさんはブラックホールの権威なんだと知り、ちょっと面白いなと思って文庫本だし安いから買ってみたのでした。ただ難しい話が書いてありそうなのでそんなに本の内容に期待していた訳ではないのです。

ところが家に帰って読んでみると、その内容が余りに面白くて立ちどころに夢中になってこの本を読んでしまいました。なんとかテレスのギリシア時代の宇宙論からはじまって、ガリレオの先見性、ニュートン物理学、そして現在の宇宙物理の基本になっているアインシュタインの相対性理論を中心にして、高校時代物理をまったく勉強せず試験で2点だったこともある素人の私でも何となくわかるくらいに、宇宙はどこからはじまってどうなっていくのかを分かりやすく解説してくれたのです。

すべては言葉で説明されていて、数式はたったひとつアインシュタインのE=mc2だけが書かれています。E(エネルギー)=m(質量)×c2(光速度の2乗)この数式ひとつだけとっても余りに観念的で頭の悪い私にはさっぱりピンと来ないのですが、この本を読んでわかったことは宇宙を知ることは自分を知ることでもあるということです。

宇宙の中に無数の銀河があり、その中に無数の太陽系があり、その中に無数の星があり、その無数の星の中のひとつが地球で、その地球の中の無数の生態系の中のひとつが自分なのです。

ホーキング博士は宇宙を解き明かすには相対性理論だけではなく、宇宙が構成されている最小のモノは何だ?という量子力学も関連づけなければいけないことも解説していて何も知らない私はなるほどと唸(うな)るばかりでした。

その解き明かすヒントにブラックホールがあるのでした。ブラックホールを解明することが宇宙を解き明かす鍵になる。しかしブラックホールは理論上では存在は証明されているのですが、実際に存在するというのは確かめようがなかったのです。

そのブラックホールが現実に存在することが証明された!しかし、なぜ光すらのみ込んでしまうブラックホールを撮影することができたのか?人は光の中で存在しているのでブラックホールなど見ることはできないはずじゃないか?ブラックホール発見のニュースを聞いて最初に思ったのはそうした疑問でした。しかし人間という生き物は頭を使うのですね。

新聞で今回の発見の特集を読むと、ブラックホール自体は人間には見えないのですが後ろからの光を当てれば、いわゆる後光が差す形で存在が確認できるということなのです。なるほど!自分にもこうした発想が欲しい。

「ホーキング宇宙を語る」の初版は1980年代頃と書かれてあったと思いますが、その当時は日本の小柴教授などがノーベル賞を受けたニュートリノの発見もまだで、本の中にはニュートリノが発見されれば大変な発見になるとも書いてあったし、そしていずれはブラックホールは発見されるだろうと予言しています。

今回その通りになった訳で、ホーキング博士の先見性には感服するばかり、買った本を二度読み直すことはほとんどないのですがこの本はあらためて読み直しました。それほど面白かったです。

ブラックホールに向かってホーキング博士に合掌(がっしょう)。音楽配信