自然の音楽家

先日仕事の関係で高層マンションに住む、とある方(かた)をお伺いした。私の子供の頃は高層ビルといえば京王プラザホテルとか新宿に4つほどしかなかったような記憶しかないが、最近は結構いたるところに立ち並び、久しぶりに行った丸の内ではビルのほとんどが高層化されていて、上を見上げるばかりで首を痛めるんじゃなかろうかと思ったほどである。

会社のオフィスとして訪れたことは何度もあるのだが、お住まいとして高層ビルに行ったのは初めてだった。TVでは物件紹介の番組でそうした億ションの内側を見たことはあったが、実際行ってみるとたまげた。

全面ガラス張りの広い窓を開けると、そこにはベランダがあってそこからは青い空が一望できる。向こうにはレインボーブリッジが見え、隣の高層ビルの屋上ではたまにTVかなんかの撮影なんかしてたりするという。

冗談で”夜景見ながらお風呂に入れるんじゃないですか?”と訊くと、アッサリ”そうだよ。”と言われ風呂場も見せてくれた。そこからはなんと東京タワーが見えて、この人が風呂上りにブランデーを片手に持って丸裸で東京タワーを眺めている姿を想像してしまった。(笑)

”すごいですね~!”とか”うらやましいな~!”とか適当に美辞麗句を並べてたのだが、実のところ余り住みたいとは思わなかった。やはり音がないのだ。部屋の中にいると何の音も聞こえてこない。

地上にいると例えば私の場合、朝には雀(すずめ)のチュンチュンした鳴き声や鳩(ハト)がたまにクルクル鳴いてたり、夜だと耳を澄ませば暗闇の向こうから中央線がずっと向こう側で走っている微(かす)かな音が聞こえたりするものである。

実は私は、公園フリークで前に住んでいた西荻窪では近くの善福寺公園を毎日飽きるほど散歩していた。歩き過ぎていつも足がパンパンだった。なぜそこまで公園を散歩したかといえば、鳥のさえずりに代表されるいろんな自然界の生物の鳴き声、夏であれば蝉や蛙(カエル)が鳴いているし、秋にはなにかマツムシのような虫が鳴いていた。鳴き声だけではなくて、鳥が水辺に着水する音とか、魚が跳ねる音、梢(こずえ)のざわめき、水がしたたる音とか、上げたらキリがないのだが、そうした自然の音を聞くのが大好きだった。

高層ビルには音がない。やっぱり自然がいい。

5月の今頃、善福寺公園は1年で一番いい季節。ぽかぽか陽気の中、下の池のベンチに座っているといろいろな音が聞こえてくる。その音は希望を奏(かな)でてるような気がする。音楽配信

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