♭9thの花子ちゃん

昔つくったギターとピアノの弾き語り曲のバンド化作業がだんだん佳境(かきょう)に入って来た。そんな時に限ってギターやパソコンが故障なんかしたりして水を差されたりする。久しぶりに息抜きをしようと思ってこのブログに向かってしまった。ただ息抜きになるのかな?誰も聴いてくれないオリジナルソングに人生の時間とお金をかけている。おかしなものだ。先日のテレビの歌番組のテーマにもあったが人はなぜ歌をうたうのだろう?まあ、こんなこと考えても憂鬱(ゆううつ)な気分になるだけなので今回はなるべく楽しげな自分の唄を紹介してみることにしよう。

「いとしの花子ちゃん」という曲で、若い頃につくった昔からギター、ピアノ弾き語りどちらでも唄っているオリジナルソングだ。今やっているバンド化作業中の唄の中にも入っていて、もう何十年もどうも怪しげに見えたコード進行を1箇所だけ見直した。

唄の内容は、貧乏な主人公の男の子が彼女の花子ちゃんを連れて銭湯に行った帰り、その風呂上りの花子ちゃんの姿がとても綺麗でドギマギしたり、彼女が泣いている姿を見て”泣かした奴は許せん!オレが成敗(せいばい)してやる!”と勇むのだがその原因は自分であることに気づいて、困った、困った、安アパートに帰ってTV見ながら二人仲良くラーメンをすするというほのぼのとした設定になっている。

昔、ライブでこの曲を聴いた女の子から、この花子ちゃんは実際にいた人物なのかどうか問い正された記憶があるのだが何て答えたかはっきり覚えていない。答えはイエスでもありノーでもあるとここでは言っておこう。(笑)

そんなことよりこの曲を作ろうと思ったのは、RCサクセションの売れて無い頃の一番古いアルバムで「シングルマン」というアルバムがあるのだが、その中に忌野清志郎が歌っていない「大きな春子ちゃん」という曲が唯一1曲だけあって、その曲の雰囲気を真似してみたかったからだ。歌詞はチビな男の子の主人公が好きになった自分より背の高い女の子、春子ちゃんに向けて”キミは大き過ぎるけど、ボクを認めておくれよ!”というもので、この行き違いになったようなコミカルなラブソングの世界観を、歌詞の内容を変えて創ってみたいと考えたのだった。ちなみに「シングルマン」の最後の曲は「スローバラード」といって有名な曲だ。

歌詞の解説はここまでにしておいて、今回語りたかったのは、この「いとしの花子ちゃん」のコード進行が自分で創っておいて昔から腑(ふ)に落ちない箇所があって、そこを今回見直すことができたのであった。ここからは音楽をやっている人向けに書くのであしからず。

花子ちゃんのコード進行はこうなっている。C→Am→Dm→G7の典型的な循環コードを繰り返しAm→G7→Amと来てあるコードに行ってそこからクリシェに行くという進行になっていて、、、滅茶苦茶だな(笑)、、、クリシェはDmでDm→Dmmaj7→Dm7→Dm6と行き最後3コードのサブドミナント、ドミナント、トニックとつながるF→G7→Cで完結している。

そのあるコードというのはディミニッシュ(以下dim)なのであった。dimを入れていたのだが、元々はこの曲アコギでジャカジャカ弾きながら創った曲でギターで弾き語る場合はそんなに問題を感じることは無かったのだが、ある日循環コードのところに6度を入れたベースラインが浮かんできて、そのベースラインを強調したいがためにピアノで弾き語りをするしかなくなってそのdimの基音(ルート)を決めてC#dimとしたのだった。曲の一貫性を保つためにこのC#dimのところもベースラインを作ったのだが、ある日この曲のベースを弾いてくれたベーシストからdimがコードトーンしか出てこないベースラインはおかしい、普通こういう弾き方はしないと鼻で笑われたのだった。

普通AmからクリシェのアタマDmにいくにはDmのドミナントであるA7がここに入るのだろう。しかしAm→A7→Dmとして唄っても唄えるのだが何かが違うのである。私が主張したい響きが無いのだ。dimの響きを入れないとこの唄は成立しない!このベーシストかなり上手くてスタジオミュージシャンになって行ったのだと思うが、唄を創ることの大変さを解っちゃいない、自分の表現したいものが出て無ければそれが音楽理論上どんなに正しかろうと意味が無い!自分は間違っちゃいない!とその当時思い、ずっと何十年もこのdimを使ってこの唄をうたい続けて来た。

「いとしの花子ちゃん」ピアノ弾き語りディミニッシュ版

ただどうしても心に引っかかるものがあり、時間がある時にはなんでこうなるのだろう?と、ああでもない、こうでもないと自分なりに分析はしてきたのであった。

C#dimの構成音(コードトーン)はド♯、ミ、ソ、ラ♯である。そしてメロディーはその上をド♯とレしか動いていない。普通dimのスケールはコードトーンから全音、半音、全音、半音・・・の交互で動いて行く。メロディーはコードトーンのド♯の半音上レに行っている。dimスケールでベースを弾くにはメロディーがぶつかってしまう。それでたぶん自分はdimのコードトーンだけを使ってベースラインを本能的に作ったのだ。それでも十分に唄えるのである。

ただこのベーシストが言うようにコードトーン以外のスケールを使ってメロディーに合わせようとするとコードトーンから半音、全音、半音、全音・・・交互のコンビネーション・オブ・ディミニッシュスケールを使わなければいけなくなる。コンビネーション・オブ・ディミニッシュスケールのコードトーンはm7(♭5)で、C#m7(♭5)にして歌ってもみたのだが、なんだか難しい感じになってしまいこれも違う!

やはり最後はC#dimに落ち着いて行ってしまうのだが、今回なぜか何十年もかかって疑問に思って来たことが解ってしまった。C#dimではなく、ここはA7(♭9)なのだ。要はC#dimのベースをAにするというだけの話で、なんてことはない。(笑)構成音はラ、ド♯、ミ、ソ、ラ♯なのである。肝心なのは♭9なのだ。基音(ルート)A(ラ)の上にディミニッシュが乗っていると言ってもいい。

実は♭9が入っている自分の曲は何曲かあって、なんで気づかなかったのだろうか?今回、目から鱗(うろこ)が落ちる気分になってしまった。♭9は基音(ルート)の半音上の音でもあるので、ものすごく不協和音に感じる人も多いのかもしれないが自分の音楽にとって絶対に必要な音だ。

ただ鼻で笑われたベーシストには次もう会うことは無いと思うのだが、今度会っても意固地になって「いとしの花子ちゃん」はディミニッシュで弾いてやろうと思う。この曲を自分で創った意地だ。(笑)だって

音楽は自由で、間違いなんてないのだから。

花子ちゃんはこんな自分をきっと応援してくれると思う。💓

※今回むずかしい音楽用語が出て来てスイマセン。以後気をつけます。(笑)音楽配信

「いとしの花子ちゃん」ギター弾き語り版