さて、前回は久しぶりに自分の音楽(YUKIO音楽)を本格的に自己解説してしまったが、今回もう1本くらい書いておこう。不器用で楽器も上手くないし、譜面も読めないけど、馬鹿(ばか)じゃないぞ!(笑)何も考えずに曲を創って来たわけじゃないことを証明しないといけない。(笑)
今回、解説しようと思うのは「銀座モード」という曲だ。15曲入りギター弾き語り作品”YUKIO”の最後から2番目に入っている唄で、このブログでも前に簡単にこの曲の成り立ちとかを説明したこともあったと記憶しているが、今回音楽的に、もう少し掘り下げて説明しようと思う。
まず、この曲を創ろうとした動機をあらためてもう一度、振(ふ)り返(かえ)ると、若い頃、昔(笑)、横浜のジャズバーで友達と飲んでいた時に、店内のBGMでかかっていた曲が変に耳に残ってしまい、「この曲いいね!何て曲なのかな!?」と、つぶやいたところ、ジャズに詳しい友達が「銀座モードだよ、銀座モード!」と教えてくれたので、「そうか!日本人でもこんな素敵な曲を創れるんだ!」と妙に感動すると、友達が「何を馬鹿(ばか)なこと言ってるんだ!この曲は外国の曲だ、アメリカの!」と突っ込まれてしまい、「だって銀座モードっていう曲名なんだから、日本の曲じゃないのかよ!」と。切り返したのだが、「銀座モードじゃなくて、インザムード。グレン・ミラーの有名なジャズの※ビッグバンドが演奏しているスタンダード曲だよ!」と呆(あき)れ顔されてしまったのがきっかけだった。(笑)
※ビックバンド-大人数編成によるアンサンブル形態のバンド。詳しくはウイキペディア
なんだよ~、日本人の曲じゃないのかよ~、、、と思い、だったら自分で日本語のビッグバンド風のオリジナル曲を創ってやれと思い立ったのであった。帰りの電車の中で、”銀座モードにのって・・・”と最初のメロディーが思い立ち、家に帰って、当時、生ピアノが置いてあったので、酔いの醒(さ)めぬまま、鍵盤に向かって、そのメロディーを確めたのが、この曲のすべての始まりである。
時が過ぎて、30年。ようやくその完成形を、自分は耳にすることができた。ところどころでむずかしくて、何度諦(あきら)めようとしたことか・・・。その葛藤(かっとう)を今回語りたい。
その当時、家にあった生ピアノで確かめたメロディーというのは、実はすべて黒鍵(こっけん)だけで動くものであった。
黒鍵メロディー・・・
これをどう料理するのか?その当時、若い自分にはわからなかったので、後回しにしたのだが、黒鍵のメロディーと共にどうしてもこの曲の成り立ちでこだわったのはトニックのルートから見た6度(6th)あるいは13度(13th)の音だった。
ここから音楽的な解説をしたいと思う。(笑)
この曲のキーはG♭で黒鍵メロディーなのだ。G♭(♭ソ)からはじまる黒鍵をみると♭ソ、♭ラ、♭シ、♭レ、♭ミとなり、音程の度数を見ると、1、2、3,5、6となる。これが何を意味するかと言うと、4と7が抜けた音階なのである。所謂(いわゆる)、ヨナ抜き音階という奴だ。ではヨナ抜き音階というのはどういうものであるかと簡単に説明すると、要は、我々、日本人が古来から持っている、日本人が大好きな音階なのである。歌謡曲の演歌というのは、西洋の音楽技法上でヨナ抜き音階を歌ったものだと、乱暴な言い方をすればできるとも思う。
あるいは、向こうのクラシック音楽家の人たちからは黒鍵弾きというのは、中国音階と言われていたりもする。20世紀の音楽に最も影響を与えたと言われているストラビンスキーも元々は中央アジア出身なので、好んで黒鍵音階を使ったとか、何かのテレビでやっていた。また、谷村新司(たにむらしんじ。日本の有名歌手)の代表曲の「昴(すばる)」という曲も、中国でやたらと人気がある曲らしく、「昴(すばる)」も黒鍵だけのメロディーになっていると本人自身が語っていた。谷村新司が中国の音楽学校の校長先生になれるわけだ。(笑)ヨナ抜き音階というのは、東洋人の血が騒ぐ音階と言っていいのだ。西洋人にとってみれば、日本人も中国人も同じだからね。(笑)
ただ、ヨナ抜き黒鍵メロディーを、西洋のビッグバンド風にしないといけない・・・。自分の頭の中に聞こえて来たのは、メロディーと共に4ビートの※ウオーキングベースなのだ。黒鍵を弾くだけでは「昴(すばる)」になってしまう・・・、リズムが裏で刻(きざ)まれる形にしないと、ウオーキングベースが聞こえて来ない・・・。この壁を超えるのに何年もかかってしまったのだった。
※ウオーキングベース-ウォーキングベースは4分音符を使い歩いているようにベースラインを展開させていくジャズでよく使われるものになります。
解決方法はひとつ。すべてを4和音にすることだった。特にトニック上の主和音に♭7度(♭7th)の音を足すことで、魔法がかかったかのように、すべてが解決できた。トニックのルート(♭ソ)から見た♭ミの音は6度(6th)ではなく、13度(13th)の音なのである。この13度(13th)の音が無いと、この曲は死んでしまうのだ。この13度(13th)の音のおかげで、リズムが裏になり、ウオーキングベースが聞こえて来るのだ。
ギター弾き語りでは、ウオーキングベースも一緒に弾く技術を持ち合わせていないので、表現できないのだが、ピアノ弾き語りでは左手でウオーキングベースを弾いているので、自分の頭の中に描いた理想に近い形になっている。そのピアノ弾き語りも、♭7度(♭7th)の音、ミなのだが、このミという白鍵(はっけん)一つをのぞいて、すべてこの曲は黒鍵で動くのであった。(ただし、経過音として白鍵が交じるところが1箇所だけある。)
なぜ、こんな芸当ができるかと言うと、この曲のコード進行は、最初G♭7(13)→E♭m7→A♭m7の繰り返しになっているのだが、A♭m7の3度の音、シという音だけは白鍵になるのだが(無視していい)、この音以外は、何にも考えなくて黒鍵を弾いても、すべて、そのコードの※テンションになっているからだ。この「銀座モード」という曲中で、ミという白鍵一つを押さえるだけで、あとは黒鍵どこを弾いても唄えるのである。(笑)ウオーキングベースもコード進行のルートだけ間違えなければ、黒鍵の上(うえ)行(い)ったり、下(した)行(い)ったり、自由に動くのであった。
※テンションコード 説明例-コード表記の中に「9」「11」「13」を含むもので、構成音中の高音部に特定の音が付加されたコードを指してそう呼ばれます。一般的な三和音や四和音に比べ構成音が増えることで響きが複雑になるため、それらの和音が持つ緊張感を総称してテンション(緊張)コードという名称によって分類されています。ちなみに、この”銀座モード”というこの曲のトニックコードはG♭7(13)なのだが13と相性がいい9を足して、G♭7(9,13)というコードで試しで唄うと、あら不思議、中国風に聞こえるのであった。日本の銀座から、中国の北京(ペキン)の下町に一瞬の内にトリップしたような感じになってしまうのだ。(笑)自分は日本人なので、やはり北京ではなくて銀座がいいと思い、テンションの9は外したのであった。(笑)ヨナ抜きは東洋風に聞こえるのである。(笑)
こんな自由な曲ないぞ!
と、思うのだが、誰も聴いてくれない。(笑)
先日、このギター弾き語りとピアノ弾き語りを合わせるような形で、最後、打ち込みなのだが大がかりなホーンセクションも入れてビッグバンド風の「銀座モード」最終形が完成したのであった。おーい!「銀座モード」よ、オマエはこんな形の曲だったのか~!もう何十年もかかって、会いたいと思ってきたが、ようやくオマエに会えたよ!けど死ぬ前に、オマエに出会えてよかった。死んでたら、オマエに出会えることもなかったのだから。。。感無量(かんむりょう)になってしまった。(笑)
ただ、この曲も誰にも聴かれず、自分がお墓に持って行くのだろうけどね。(笑)
けど、生きてる限りは、他人(ひと)に聴いてもらう努力をしなきゃ。アコギの弾き語りしかストリーミングで配信してないですが、聴いてみませんか!?録音したものは、メロディーがヨナ抜き音階なので、思わず美空ひばりになったような気分になり、かなり肩に力が入ってしまった唄い方になっているのですが、いい曲ですよ。気に入ったら買ってみませんか?お待ちしております。おしまい。
音楽配信中 ギター弾き語り”YUKIO”14曲目です。