キミは#11thを聞けるか!?-ブラボー運命曲-

ローリングストーンズというバンドにキースリチャードというギタリストがいる。もはやこの時代、ローリングストーンズを知らないという人もたくさんいると思うので、簡単に説明すると、50年前ビートルズと人気を2分したライバルバンドで、ビートルズは人気絶頂の中、あっと言う間に解散したのに対して、ローリングストーンズはいまだに現役で走り続ける世界のトップバンドに君臨している。メンバーはみんな80歳ちかいのだろうが、ボーカルのミックジャガーなんかは、新しい奥さんとの間に子供をもうけたというニュースも流れたりして、夜の生活も盛んのようで、衰えを知らないバンドなのだ。(笑)

このストーンズの何百もある曲を、ミックと共に創ってきたのがキースリチャードなのである。私も小さい頃からビートルズというよりも、黒人音楽のノリに近いローリングストーンズの曲の方を好んで聴いていたりして、キースは子供の頃から憧(あこが)れの存在だ。ただ、バンド初期から中期の頃の曲をよく聴いたのだが、それ以降あまり聴かなくなってしまった。なんだかワンパターンだからだ。

このワンパターンの黒いロックンロールが良いんじゃないか!と、巷(ちまた)にたくさんいるストーンズ・ファンに怒られてしまいそうだが、やはりストーンズの音楽を愉(たの)しむには、ヒット曲をまとめたベスト盤を聴くのが、私にとっては一番よろしい。(笑)

そんなストーンズに対してというか、キースリチャードに対して前からずっと疑問に思っていたことがある。上の感想と同じなのだが、なんでこんなワンパターンの曲ばかりをやるのだろうか?と。何十年も同じことをやって来て、自分たちは飽きないのかな?と思ったりもして、ミックジャガーの方はストーンズで出来ないことを、ソロの方で発散しているみたいだが、キースの方はソロの方でも一貫してシンプルなブルースやレゲエに影響を受けた曲をやり続けている。ブルースマンと呼ばれる人達は、みんなそうなのかもしれないが・・・。

ただ、もう50年間も世界のトップを走り続けて来たギタリストである。ローリングストーンズがツアーを組めば、世界でどれくらいのお金が動くのか想像すらできない、ものすごいプレッシャーの中で生きて来た人なので、頭が悪いはずがない!もっと今風の派手な曲をやってもいいのに!と、思うのだが、やらない。(笑)add9thなんかいれて、もっと洒落た曲でもやればいいのに!キースくらいの才能であればいくらでも創れるだろうと思うのだが、あいかわらず、黒いロックンロール。(笑)

私が思うに、まず第一に、今まで自分たちの音楽を愛し続けてくれたファンに向けてキースは演奏するのだ。ファンの期待を裏切ってはいけない!ファンに応(こた)えないといけない。それがプロの演奏家たる務めだ!!と。

そして音楽的には、ここからが今回の本題なのだが、キースは自分が100%理解できる音楽しか手を出さないのだ。80%~90%わかっていても、曖昧(あいまい)な部分が少しでも頭にあれば、それはやらない。add9thを加えたコードで、いくらでも曲を創れるのだろうが、完ぺきにその曲を自分の肉体化することができない限りはやらないのだ。自分が100%できると思ったことしかやらないのである。そこが、ローリングストーンズがもう何十年間も世界の現役のトップバンドでい続けられる理由なのだと思う。偉(えら)そうに私の勝手な憶測(おくそく)で述べてしまった。(笑)

そう、ローリングストーンズの曲にはテンションが存在しないのだ。たぶんキースはテンションのことはそれなりにわかっているはずだが、100%確信が持てない限りは、そんな曲は要(い)らないのだ。プロ中のプロの演奏家なのである。

なんでこんなことを語ったかというと、前回テンションコードの話をしたので、今回、もう少しこのテンションについて掘り下げて行こうと思ったのであった。

コードにテンションをつけると、つけないとでは、音楽の世界がまるっきり違ってきて、亡くなってしまった、日本のカリスマ・ロックンローラー、忌野清志郎(いまわのきよしろう)も、売れない若い頃は9thやディミニッシュなんかを使った曲を創っていたのだが、さっぱり売れなくて、テンションを使うのは止(や)めてしまったと自伝で語っていた。それほど、テンション1つを入れることによって、曲の中の構造が複雑に動くようになって来るのだ。

自分はテンションのことをわかっているというつもりは更々(さらさら)無いのだが、いままで創った曲にはテンションコードがついた曲がざらにある。なんでそんな難しいコードをつけるのかと問われても、そう聞こえて来たから仕方がないじゃないか~!と言うほかなく、意識的に曲を難しくしようという気もないのである。できれば簡潔に!と言おうか、できる限り簡潔に!にしようと思って、余計な贅肉(ぜいにく)を削(けず)りに、削って、この様(ざま)である。(笑)テンションには苦労を散々(さんざん)かけられてきた。(笑)

そんな私が語る、前回に続いてのテンション話にお付き合い願いたい。(笑)前回は「銀座モード」というオリジナルソングを紹介したが、今回は「ブラボー運命曲」というピアノ弾き語り作品「YUKIO PIANO」7曲目に入っている唄だ。

「銀座モード」の回では、9th,11th,13thという音を含むテンションコードを紹介したのだが、実はテンションの種類はまだ他にもあって、この9th,11th,13thに♭(フラット)や♯(シャープ)をつけた♭9th,#9th,#11th,♭13thという別のテンション音がある。こうしたテンション音をオルタードテンションと言って、オルタードテンションばかりを使ったオルタードスケールなんてものまで音楽理論上では存在する。また、ややこしくなってきたな~。(笑)

自分の曲の中には、このオルタードテンションを使った曲もあったりするのだが、さすがにオルタードスケールを使う曲は無い。(笑)ジャズの中にはあるのだろうけど、一度、オルタードスケールを使った歌ものにお目にかかってみたいとは思っている。(笑)

今回紹介する「ブラボー運命曲」は、このオルタードテンション#11thを使った曲なのである。と言おうか、#11thを使わないと唄が成立しないと言ってしまった方がいいかもしれない。

他人(ひと)のウエブから無断で取って来てしまったが、上の図がキーがC(ハ長調)でのテンション早見表である。この表を拝借した”ベースの初心者”さんのウエブとてもわかり易いのでみなさんも見て下さいね!!ベース弾きたい方はぜひ!こちらになります。https://bass-beginner.com/index.html


この曲のヒントになったのは、Pファンクと言われている独特のファンクのリズムをもったパーラメントというバンドの曲で、もう曲名を忘れてしまったが、当時どっぷりとハマっていてよく聴いたのだった。ベースラインが独特で、「ブラボー運命曲」の方でも、確か同じベースラインを使っている。

ただ私の「ブラボー運命曲」の方ではそのベースライン(3音しか無いのだが)と唄がユニゾン、要は、唄とベースが同じメロディーになっていて、このままでは余りに奇妙で曲としては成立しないのだが、この#11thが奇跡を起こすのである。(笑)

当時、ピアノで弾いて、間違った音を出してしまったと思い、この#11thの音を弾かないようにしていたのだが、この音を省略すると完全に曲が崩壊してしまうのである。(9、13)thコード上での、ユニゾンの唄とベースが気持ち悪い。(笑)

何年もこの唄を封印(ふういん)してきたのだが、心を澄(す)ますと、やはりこの#11thの音を入れることにより、ベースラインも自然に動くようになることに気づき、なんとかこの曲を完成させることができたのであった。本当に、この曲を完成させるまで、何度溺(おぼ)れそうになったことか!!(笑)他の曲もそうだけどな・・・。(笑)

#11thは不協ではない!!

こう気づいてしまったのであった。(笑)

#11thの音は上の早見表を見てもらえばわかるように、そのコードのルートから3全音で、トライトーンの音でもある。”トライトーン”を検索してみるとウイキペディアでは”悪魔の音”であり、不協和音の中でも最も響きの悪い不快なものとされ、積極的に使われるようになったのはバロック期以降と書いてある。また♭(フラット)5thの音でもあり、黒人ブルースを演奏するブルーノートスケールでもこの音は外せない音でもある。

そういえば、ローリングストーンズの代表曲で”悪魔を憐れむ歌”というヒット曲があった。キースリチャードはこの曲で♭(フラット)5thの音を鳴らしているのだろうか?自分は耳が悪いのでよくわからない。(笑)

けど、自分はこのブログを最後まで読んでくれているキミに向かって自信をもって問(と)うことができる、

キミは#11thを聞けるか!?

と。(笑)

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「ブラボー運命曲」ダイジェスト