仕事帰りの道すがら

ギターとピアノ弾き語り曲を一人バンド化した作品第2弾が出来上がった。作品名を「仕事帰りの道すがら」という。今回はこの「仕事帰りの道すがら」について語ってみることにしよう。

全9曲入っていて、「銀座モード」という曲以外は基本ピアノ弾き語りで唄って来た曲ばかりだ。前の第1弾作品の「今夜」は結構、歌詞が明るめのものばかりが並んでいたのだが、今回は女にふられただとか、そんなのばかりの暗い歌詞が多い。笑

ピアノで弾き語る方が、ギターで弾き語るよりもなんだか感情が叙情的になると言おうか、自分の世界に閉じこもり気味になると言おうか、上手く説明できないが、自分とすれば、ギターで弾き語るよりもピアノで弾き語る方が好きなのは確かだ。鍵盤の方がわかり易く目で音楽を追うことができるからなのかもしれない。なのでピアノ弾き語りでやって来た曲を中心にした今回の作品は前回よりも音楽的にも難解なものが多くなっている。

自分の心を正直に話せば、自分の思い浮かんだ曲想を鍵盤でたどると、12音で表せない部分があって、それをどう表現すればいいのか若い頃さんざん悩んで来た。それでああでもないこうでもないとコードを微妙に変えたりして、余計おかしくなったりもしたのだが、笑 自分なりの、その結論が今回の「仕事帰りの道すがら」という作品だと思っている。ちょっと大げさな表現だが、自分はこの作品を創るために生まれて来たのだ。

ここまで言い切っている割には、誰も聴いてくれないという情けない状況と言おうか、自分の才能が無いだけなのか、わからないのだが、とにかく、この作品が私の人生のひとつのゴールでもある。鍵盤上で表せない音があると、酔っぱらった時、家族に話すと、何をわけのわからないことを言ってるんだと怪訝(けげん)な顔をされたりもするのだが、12音ですべての音が解釈できると思っている音楽家の人たちはどこか慢心している。人間のこころはそんな簡単なものでは無いと思う。

そして、自分がこの作品に込めたものと言おうか、いや、無意識の内に表れて来てしまったと言ってもいいのかもしれないが、この作品の最大の特長が挫折感だ。この「仕事帰りの道すがら」というタイトルソングはまさに私の人生の挫折の唄なのである。

若い頃から自分にとって、世間一般で言う、いい学校に入ったり、いい会社に入ることは、心の底ではどうでもよかった。当然、受験勉強で落ちたり、面接試験で何度も落っことされたりもしたのだが、そんなことどうでもいいのだ。そんなことが自分のこの世に生まれて来た挫折感に繋(つな)がってはいない。そんなことより一人の女の子にふられたことがショックだった。肩書やお金より、愛がとぎれてしまったことが何よりもショックだった。

大人となった今から思えば、そんな純粋な愛や恋があるはずもない、どんな純愛もこころの裏にはいろいろなものが隠されていたんだなと感じたりもするのだが、当時の自分はただ、ただ、自分の人生の前を見ていた。そんな自分に、”甘いんだよ!”と現実を突きつけられた瞬間だった。声を失い、一晩中、安アパートの中で大泣きした。腹の底から泣いてしまい、大人となった今でもたまに悲しいTVドラマを観て泣いたりもするのだが、そういう泣き方と次元が違うと言うか、情けないくらいに泣いてしまったのである。

その時のこころの景色を「仕事帰りの道すがら」で唄っている。「仕事帰りの道すがら」から聴こえて来るのは、時間が経(た)った今でも、ものすごい現実への絶望感と言おうか挫折感で、当時の自分の抱えていた重たい、、、何だろう?荷物なのか?何なのか?説明のつかない重たさに、とうとうつぶされてしまったと言う感じか?変えることができない突き付けられた現実に対して、自分の力が及ばないという無力感、、、ともあれこの曲を思いついた時、自分はこの唄を求めていたのだと思った記憶がある。

自分の人生を物語として語ると、もう物語は後半にさしかかっている。ギターやピアノで弾き語って来た「今夜」、「仕事帰りの道すがら」、そしてもうひとつ作品が残っているのだが、こうした曲群はみんな若い頃創った唄で、今から思えば、歌詞は若気の至りにしか聞こえないのだが、いまだに新鮮に唄うことができる。若い頃の方が、何かに向かって真剣に生きて来ているからだろう。

そして歳(とし)をとった自分が、昔の若い頃の自分に向けて言えることは、「仕事帰りの道すがら」で唄っているような絶望的な挫折感は、当時は涙にくれたのかもしれないが、その後の自分の人生に大いに役に立っているよ!ありがとう!という感謝だ。本当の挫折感は人を強くする。なぜならそれ以上落ちるところが無いからだ。

できれば挫折なんて誰もしたくは無いのだろうが、誰もが結局は人生の内で1回か2回はするのだろう。それが普通なのだと思う。そうした挫折を経験したことが無いのかな?と思われるような大人の人にもたまに出会ったりもするのだが、なんだか、かえって哀(あわ)れな人だなと、不思議とこころの中で思ったりもするのである。

「仕事帰りの道すがら」の完成形は、そうした挫折を経験したことがある人には説得力がある唄に仕上がっている思う。機会があればぜひ聴いてもらいたいと思うのだが、作品としてCDにまとめただけで、ストリーミングサービス等で無料で聴いてもらう予定にはなってはいない。今のところピアノ弾き語りだけは聴けるようになっているので、ぜひそちらの方でまずこの曲を聴いていただければと思う。それで気に入っていただけるようであれば、どこかの機会でまた耳にすることが無きにしも非(あら)ずといったところで今回の話は終了させようと思う。笑

最近、あの世に、こうした曲を持って行こうと思っていたのだが、お金と同じで持っていくことが出来ないことに気づいてしまって、次回はそんな話をしてみようと思っている。

”仕事帰りの道すがら”ピアノ弾き語りダイジェスト

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