湯豆腐専門店

我が家の通りの向かい側の家がお店を始めた。夏前からずっと工事をしていて、業者の人たちが我が家の前に車を停めたりして、庭先に出てる朝顔の茎が切れちゃって嫌な思いもしたりしたのだが、ようやく営業を始めたようだ。

何を始めるのか?興味津々(きょうみしんしん)だったのだが、どうやら飲み屋さんらしい。朝、玄関の前を通ると定休日火曜水曜と掲げられていて、酒配達業者の「カクヤス」の配送員が看板を出していないのでわからないのか、ここら辺にお店があるはずなんですけど…と訊いてきたので、ああ、たぶんこちらのお宅ですよと案内してあげたりもして、「カクヤス」で大量にお酒を仕入れて、そんなお客さん来るのかな?とも思ったりもするのであった。

ともあれ先日深夜カップルかなんだろうか?「ウッソ~!こんなところにお店なんかあるの~?あるわけないじゃん!」とか叫んでたグループが、驚いた風に、隣に入っていく音を聞いた。このグループで2組目くらいで、まあお店をはじめたばかりだから仕方がないのかもしれないが、お隣さん果たしてお店を続けてやっていけるのだろうか?と、大きなお世話だが心配なんかしてみたりもして、いや心配なんてしてないな、笑 ただの外野から眺めているおじさんでしかないのだが、このお店が繁盛するのかどうなのか興味を持って眺めているのであった。

前はこの家、老夫婦が住んでいてお亡くなりになられて、その後、息子さんが戻ってきて住んでいるみたいなので、実家兼お店で家賃がかからないので、そんな儲からなくてもいいのかもしれない。たまに夜お酒を買いに外に出て、このお店の灯りのついた窓から中をチラっとのぞいてみると、壁一面にレコードが並べられていて、音楽を聞かせる飲み屋なんだなと想像してしまった。自分の趣味をそのままお店にしてしまったのかもしれない。であれば、そんなに儲からなくてもいいのだろう。工事の時からそうなのだが、時間に追われてやっている感じではなく、お金をガツガツ稼いでやろうという雰囲気もまったく感じられないのである。

しかしながら、よくこんな場所でお店をはじめようと思ったなと感心するのであった。ただ、よくよく考えるとこの街、変な店がいっぱいある地域でもあるので、あながち変な発想をしたわけでもないなとも感じるのである。ちょっとそこに行けば、写真バーとか、プロレス喫茶とか、山岳飲み屋だとか、田舎じゃ考えられない、わけのわからないお店がたくさんあるので、お隣さんもこの場所であれば、自分の趣味を商売にすることができるかもしれないと考えても不思議ではない。

そうだな~、もし自分がこの家でお店をはじめるとするならば…、何がいいかな?お隣さんのことを棚に上げて、フト考えてみた。家もボロやだし、蕎麦屋でもやってみようか?しかしながら、道路の向こうにあるウチより広くて年季が入ったボロやで美食俱楽部とか言って看板出して、手打ち蕎麦を食うイベントとかやってたりするし、蕎麦屋じゃ当たり前過ぎて、客来ないよ!とかも思ったりして、妄想がどんどん膨らんでいったりするのであった。そして、この妄想の結末を語ることにしよう。

湯豆腐専門店。

そう!湯豆腐専門店なら客は来るはずだ。湯豆腐専門店!いいぞ、いいぞ、湯豆腐専門店なら儲かる気がする。日本全国探しても、豆腐屋はたくさんあるだろうが、湯豆腐専門店ならウチだけだ。普通、湯豆腐って、昆布の出汁をとるのだろうが、昆布汁だけでなくて、あったかい牛乳に入れて豆腐をあたためて食べるとか、若者向けにカレースープに入れた湯豆腐とか、そういうのは湯豆腐とは言わないのかな?であれば、薬味を醤油ではなくて、明太子にしてみるとか、いろいろなバリエーションをつけてみるのはどうだろうか?湯豆腐にレモンをかけて喰うとか。考えればいろいろなアイデアが浮かんでくるではないか。

「ウチ、湯豆腐専門店やってみるか!?」

有頂天になり、このすばらしいアイデアを家族伝えると、なに馬鹿なこと言ってるのよと軽蔑の眼差しが返ってきた。どうせそんな店やっても、アナタはなにもしやしないじゃない!?やるのは私よ!私!とかなんとか言われて、前にカレー屋やろうと言われたこともあったわね?その時も、あなた空想だけして、なにもやらなかったじゃない!?やるのは私よ!私!とか同じ言葉を繰り返すばかりで、議論は嚙み合わないのであった。そんなこんなで、今日という日常は過ぎていくのである。

湯豆腐専門店いいアイデアだと思うんだけど…。音楽があるからちょっと無理か。

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懸垂(けんすい)男

今日は何日かぶりに雨が降った。多少涼しくなったので、冷房ではなく扇風機をかけている。しかしながら、この湿気はなんだ?9月に入ったのに、まるで梅雨のようだ。気にせず話を続けよう。

先日、朝。寝起きにカーテンを開くと、道路の向かいの家のガレージがみえるのだが、そのガレージの出っ張った屋根のところで男が懸垂(けんすい)していた。現実に目を疑ったのだが、寝起きの頭を冷静に整理し、そういえば昨日もここで何かやっていて、私が家の玄関から出ると、そこにいて、なんだか怪しいなと思い、怪訝な顔つきで男をにらむと、向こうに消えた、その男ではないか!

「あなた、そこで何やってるんだ!」と窓越しに訊くと、「散歩!」と答えてくる。散歩の途中で懸垂(けんすい)をやるとは、なかなかふてぶてしい奴だと思い、「あなた、どこの奴なんだ?」と、さらに訊くと、「そこの中国語学校の生徒。」と言い、「バイ、バイ!」と言って去っていった。

さらに次の日、朝の散歩から帰って来ると、またしても同じ場所で、その男がガレージの屋根で懸垂している・・・。「オマエ、そこで何やってるんだ!?そこで懸垂するんであれば、その家の者に断ってからやりな!」と注意すると、黙ってその場から立ち去ったのだが、私が家に引っ込んだ隙に、戻ってきて、同じ場所で懸垂(けんすい)していたらしい。後で家族から聞いた。

さらに次の日、散歩から帰って来ると、その男が向こうからやってきて、一瞬殴られるかな?と恐れたのだが、「おはようございます。」と挨拶されて、別方向に去っていった。ほっとして、いつも通り朝顔に水をやって家に入ったのだが、その後、男は戻ってきて、やはり向かいの家のガレージの屋根で懸垂(けんすい)していたとのこと。家族から聞いた。

さらに次の日、散歩から帰ってくると、男はいて、懸垂している、家族のように見て見ぬふりはできないので、「だから、そこで懸垂(けんすい)するのなら、この家の者に断ってやりな。」と注意すると、男はなにも語らず、私に軽く会釈(えしゃく)して、その場を立ち去って行った。

もうここまで来ると、私も後に引けないので、向かいの家のピンポンを押し、奥さんに、これこれしかじか、懸垂(けんすい)男がこんなことしてるんですよ!と説明し、奥さんはもう仰天(ぎょうてん)するだろうと想像していたのだが、なんてことはない、奥さんも、もうこの懸垂(けんすい)男の行状を知っていて、「そうなんです、、、どうしようかと思っちゃって、怖そうなんで声かけづらくて、、、けど、悪い人にも見えないし、そうですか、中国の人なんですか、、、日中友好の懸け橋ということもありますし・・・とか、なんとか呑気(のんき)なことを言っている始末、ともあれ、この懸垂(けんすい)男の行状を報告したということで、私の隣人としての責務は果たした、これ以降この件について、自分は関知しないと決心したのであった。

翌日は軽い雨だった。懸垂(けんすい)男は、雨の中、傘をさして、懸垂(けんすい)していたらしい。家族から聞いた。。。家族もそんな目の前で懸垂(けんすい)している姿を見て見ぬふりをするのではなく、注意するなりしたらいいではないか!見て見ぬふりをしている方が、よほど不自然だ!と夕飯時に軽く愚痴ると、「このテーブル(いわゆる、ちゃぶ台のこと)ひっくり返していいですか???」と反旗(はんき)を翻(ひるがえ)してくる。久しぶりに、ちゃぶ台返しをしようというのか、この野郎!上等じゃねぇか!という気持ちが沸き上がるも、ぐっと心にしまい込み、食卓を離れ、一人チビチビ酒を飲むのであった。

家族が言うには、この懸垂(けんすい)男は、翌日、向かいの奥さんに注意されたとのことで、姿を現していない。

ほっとしていいのだろうか?なんだかさみしい気もするし・・。中国では、どこの家の屋根で懸垂(けんすい)していたんだろう?周りがみんな親戚の家ばかりで、そんな小さいことを気にするような世界じゃなかったのかもしれない。行ったことはないが、なにせ大陸は広そうだからな。。。そういえば、1年前の夏も、奥のアパートに引っ越してきたインド人も、変わっていたよな。。。アパートの玄関前で大の字になってぶっ倒れていたりもしたし、スマホで何語かまったくわからない言葉を大声で話してた。いつの間にかいなくなっちゃった。インドも広そうだからな・・・。

雨が降ったせいか、窓から差し込む夕焼けの日差しが、湿気と絡んでなんだかやさしい。自分の心も今日の夕焼けのようにやさしくありたい。懸垂(けんすい)男くんは、大陸でどんな夕焼けをみてきたのだろうか?きっとおおらかな夕焼けなんだろう。

ごめんね、懸垂(けんすい)男くん。

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